コラム

フライトシュミレ−ションの世界 l998.4.l9 高橋英造

初めてコンピュ−タ−によるフライトシュミレ−ションを始めたのが7年前のl990年頃である。その頃のコンビューターはウインドウズが出る前の日本語処理が出来るMSDOS/Vが出る前のMSDOS/3.3の時代のものである。
ハ−ドウェアはIBM互換機の286である。そしてハ―ドデスクはわずか40メガバイトと小さい。 もちろん日本語処理は出来ず、すべて英語のみ初めは説明書を見るだけでうんざり。
ソフトはマイクロソフト社のフライトシュミレーター4 (FS4)でやっと景色にl6色の色が付きはめ、空が空色、陸地が緑、山が茶色、海が青になっていて滑走路やビル道路などが書かれていた。 FS4の前のFS2やFS3では確かワイヤ−フレ―ムといって景色はすべて線のみで書かれてたのが始まりであった様に思う。FS4は追加ソフ卜が完備していて日本の景色、イギリスの景色デ−タや景色を作るソフトなどがあり自分で好きな所に滑走路を作ることも出来て発展性に富んでいて、次から次にソフトが世界中から出されるので、そちらの方でも楽しめた。また、フライトコントロ−ルやラダ−を付けると動きも良く楽しめる。しばらく自己流のフライトを楽しんでいたが、なかなかタッチアンドゴ−がうまくいかない、計器の見方も良く分からない、しだいに慣れてくるともう少しうま<飛びたいと思うようになっていった。

月刊エアラインを見ると航空留学の記事があり、初めはいい年してと思ったりしたが自分より年上の体験談を読むと勇気が沸いてきて勢いで行くことになってしまった。説明書を取り寄せて見るとロスアンゼルスのリバーサイド空港ではないか、ここならフライトシュミレ−ションにあっていつも飛んでいる所なので心強くなってきた。
しかしアメリカに行って見ると最初から問題だらけで、身体検査では血圧で再検査、筆記試験はぎりぎり、天気の良いはずのロスアンゼルスは視程が悪くl5日もクロカンの延期で待たされてさすがにしびれが切れて実地試験はショ−トフィ−ルドランデングが不合格で再試験と、最初の自信はどこへやら予定よりl月近くも延びてしまって散々。しかし、血圧の為のダイエット、筆記試験の結果通知が来るまでの勉強、少しはましになった英会話、アメリカでの留学体験、貴重な友人達、おまけに操縦免許と一石何鳥かになった体験で満足している。

アメリカから帰って見るとATPという旅客機操縦ソフ卜がしだいにバ―ジョンアッブされサウンドカ―ドを入れるとATCが聞こえると言う優れものになっていた。IFRで飛ぶとAITS,DERIVERY,GRAND,TOWER,DEPARTURE,SENTERと一通り揃っていてそのつどチャ−トを見ながらATCを聞いて周波数を変えて応答して離着陸して行かなければならない。アメリカで勉強したことがここで大いに役立った。離着陸の手順やコ―スや高度、逮度を間違えるとATCから注意がとび最後に得点が出て緻密性、安全性、エアマンシップなどに別れて減点され総合得点が出る、その累積得点で給料が上下する。始めは近距離で風も無く視程も良いやさしいコ―スで飛行機も737などの小さい旅客機だが、しだいに747などの大型機になって夜間や雲も多<風も強くなって難しくなってゆく。あるフライトではATlSで聞いたランウエーでは横風が強くて降りられないときは機長の判断でランウエ−変更を申請し別のランウエーに着陸しなければ減点対象になる程で大変である。アメリカ全土の中にこの様なコ−スが96あり、私も40コ−ス位までで給料が少な<なったので一時中断となった。結構難しいので本物の操縦免許位持っていないととても操縦出来ないと思えるくらいである。アメリカ人のシュミレ−タ−に対するこだわりが伺える。まだ飛んでいないコ−スは実機に乗れなくなった時の楽しみのために取っておくことにしてある。
そのうちFS4の方もバージョンアップされFS5となり格段に景色が良くなったがいままでの286のハードではまるでビデオのスロー再生みたいにカクカクとなってまともに動かず2台目のコンピューターを買うことになった。一台目を買ってから2年l0ケ月目である。

2台目は486の66MHzのVLバスでハ−ドデスクは240MBその当時最速のマシンであった。今まで使っていた286コンピュ一タ一の3倍以上の処理速度が出た。この486からMSDOS/V(ドスブイ)のOSになってやっと日本語処理が出来る様になった。しかしフライトシュミレーターソフトはほとんどアメリカやヨーロッパ製で英語で動き日本語はほとんど必要なかった.
マシン購入後、早速動かして見ると確かに速い快適である。そのためFS5の色々な景色はもちろん、ヘリコプターや戦闘機のシュミレーションなどを買ってきて色々試してみたが戦闘シュミレーションはミサイルや機関銃で撃っても当たらず、すぐに撃墜されてしまいすぐに飽きてしまった。戦闘機は私には合っていないようである。

 またFS5にもどって日本シナリ−で景色は載っていない関東地方のブライべ−ト飛行場を作ることにした。 これは市販のソフトがあってフライトシュミレ−タ−FS5を作ったマイクロソフト社以外のサ−ドパ−ティの会社で開発したもので飛行場や道路、建物、川などを簡単に作ることが出来る。また各種の機体デ−タソフトも売っていて世界の航空会社別のジャンボ機から日本航空から新中央航空のアイランダ−機、セスナや我々の愛機のPA28までFS5に追加することが出来る。このようにしてフライトシュミレ−タ−の世界が成長しているのである。
FS5の次のバージョンFS5.lになると画期的なことが起こった。ビジビリティの設定が出来るようになったのである。l/8マイルから無制限までl8段階に細かく設定出来る、今まではこれが出来ずなにか物足りなさがあったが実にリアリティが増した。特にIFRフライトの練習には最適であり、良<練習した。
この頃になるとシュミレ−ションソフトはコンピュータ−に入れやすいCD−ROMになって来てソフトの容量も今までの数十倍になってきた。私もCDのデスクを買ったのでハードデスクは見る間にたりなくなったので追加のハ−ドスクを買うことにした。買ってきて説明書を見たら台湾製ですべて英語、辞書を引きながらl週間ががりで使える様に設定した。DOS/V時代は大変だったのである。間もなくウィンドウズ3.lが出てDOS/V機はやっと先行するアップルのマッキントッシュ(マック)のOSに近づいてきて素人でも使いやす<なってきた。
この頃やっていたのがフライトアンリミッテッドというアクロバット機のソフトである。グランドスク−ルから始まって2ポイントロ−ル、ループ、インメルマン、スブリットS、スロ−ロ−ル、ナイフエッヂ、スピン、ハンマ−へッドなどなどG感覚こそ無いものの、すべてのマニューバーが出来るが操縦を慎重にしないでGを掛け過ぎると飛行機が空中分解する.また、うしろの席には厳しいインストラクタ一が乗っていてうるさいほど助言を与えてくれるがなかなか合格点をくれない。最後に言うのは「あんたに必要なのはもう一度の練習だ」である。
95年の暮れになってウィンドゥズ95が発表されインタ−ネットが身近いになって普及してきた。コンピュ−ターの世界は486の次のCPUのペンティアムが66メガヘルツからどんどんクロックを上げていった、そしてぺンティアムブロ、ペンティアムMMXとめがぐるしく移り変わり性能は著しく向上していく。我が愛用の486機ももはや時代遅れとなったが486のCPUをサイリックスのl2Oメガヘルツに取り替えて処理速度がl.9倍となり何とか延命している。
FS5.lもFS95が発売され今までのMSDOSのOSからやっとウィンドウズのOSで使用対応となり多少使いやすくなったが内容はFS5.lとほぼ同じである。しかしながら最近の景色デ一タは衛星写真を基に作られていて実にリアルである、建物が―軒一軒わかる程の緻密さであるしかしながら、ソフトの容量がばかでかく数百メガバイトで実に重く我が486機では快適には動かなくなってしまった。486機を買ってから4年半そろそろ買え替え時期に来ている。この間、フライトアンリミテッドUと言うソフトを買った、このソフ卜のサンフランシスコの景色は実にリアルで実機で飛んでいる様である、また天気が崩れ雨になると雨粒がフロント硝子をつたい下に流れる様子は実に良く出来ていて未来のシュミレ一ションを彷彿とさせる。しかしながら我が愛用の486機では何分にも力不足が目に見えてかわいそうにみえる。そのためFS95の次のバ−ジョンであるFS98やFS98日本語版も発売れているが新しいコンピュ−タ−を買うまでお預け状態にある。今はフライトはJA3607の実機がメインでシュミレ−タ−はクロカンの予行演習でしかほとんど使わな<なってしまった。

コンピュ一ターの仕事はインタ一ネットがメインでクラブのクロカンの下調べや天気情報、部品の購入などに使っている。シュミレータ−関係では新しいシュミレ−ションソフトの動向やインタ−ネットでダウンロ−ド出来る景色、機体などのファイルを取り寄せている。そのほか景気動向、インタ−ネットメ−ルたまには画像など。
コンビュ一タ−のその他の使い道としてファックス、名刺や宛て名印刷、英会話練習、囲碁将棋麻雀練習、カラオケ練習などなど実に多彩だ。

フライトシュミレ一タ−はコンビュ−タ−のハ−ドと共に発展して来ている、そこに必要なのはその時代の最高のハ−ドの性能である。今までのシュミレ−ションソフトはハ−ドの最高の性能に合わせて開発されてきた。今後l0年間で今のハ−ドウエアのl00倍の処理能力を持つコンピュータ−が出来る予測がされている。l00倍を考える時、シュミレータ−は何でも出来そうである。先ず景色は写真と同じ様になり世界中が綱羅され山の上にある樹木一本一本がわかる程細か<なり、航空管制は実機と同じ様に音声認識で応答してくれて英語の発音が悪いと何回でも言い直しさせられそうである。また、天候は現在の世界の気象デ一タがそのまま使用され、また特殊なコックピットが売り出され油圧で今の大型機練習用の本物のシュミレ−タ−の様に操縦が体験できる様になるかもしれない。これらの中の一部は実際に使われている。

そうなると実機は必要なくなるのかな? うれしいような、さみしいような。でも実機のフライトはシュミレ−タ−と違い肌で感じる気温の変化や心地よい揺れ、墜落した時はリセットの効かないスリル、トイレを我慢する緊張感、他人に操縦をまかせた時の不安感、そして何にもまして素晴らしいのはフライトの自慢話を聞いてくれる良い仲間との交流である。出来るだけ長<飛びたいと思っている。


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