コラム 
       

                         昴を見つけて             2004・12・11 高橋 英造
 

 今年9月に八丈島に行きました。八丈島は龍ヶ崎から南に約300Km、排気ガスもスモッグも少ない星を見るには最適の場所です。 満点の星空をじっくりと見たことのない私にとって一度見たかったテーマでした。 以前に何度か島を訪れたことはありましたが雲があったり、月が出ていたりで星が良く見えませんでした。今度こそとの思いで出かけ、島の中ならどこでも良く見えるだろうと期待を膨らませて行ってみましたが島の中はもちろん海岸に出ても意外と外灯が多く明るすぎて星は良く見えません。 外灯が一つでも視界にあると見える星が半減してしまいます。

 何度か場所を変えて最後に登龍峠(のぼりゅうとうげ)に行きました。 ここは島の外周道路の一角にあってくねくねと曲がった山道を車で20分程走った展望台で夜は外灯も少なく絶好のポイントです。  峠に着くと暗闇にすでに数組のグループがいて夜景や星を見ていました。峠からは港や町の夜景きれいな所です。 高度があるので崖から少し離れると町の光が消えます。 目が暗さに慣れてくると空の星が輝きはじめました。  こんな星空を見るのは生まれて初めての体験で大感激した。思わず「うわあぁ・・・・」と声が出てしまうほどの圧倒的な星の数です。星座の区別がまったくつかないほどぎっちり詰まっています。何しろ空すべてが天の川と言っても良いくらいなのです。 
 夜空には星がこんなにあったのだと初めて知って、今まで自分は人生の何を見ていたんだろうとまで考えてしまいました。 よく宇宙飛行士が宇宙から帰ると人生観が変わり伝道者になった話を聞きますが本当に納得できそうです。 

  しばらく空を見あげていると一角にもやっとした星団が見えました。 さらに見ているとその星団の中に5〜6個の星があって一つ一つがネックレスのダイヤモンドのように神秘的に瞬き始めました。その中に吸い込まれそうな雰囲気です。 ほかにはその様な星はありません。「すっごいきれいだね、なんと言う星かな」と一緒に行った千田さんに聞くと「あれは「すばる」ですよ、うちの方でも見えます、こんなにきれいではありませんが」と教えてくれました。 
「へーあれが有名な「すばる」かあ、茨城県でも見えるんだあ?」と「すばる」と聞いて頭の中、車の免許を取って初めて乗っていた車も富士重工の「スバル360」だったとか富士重工は中島飛行機系の会社だから今のフライトクラブとも関係があるかなとか、谷村新司の歌の「昴」をカラオケで歌ったことなど思いを巡らせてしまいました。 今まで自分のごく身近に「すばる」という言葉がありながらその美しい星を見たことはありませんでした。 そこでしばらくベンチに仰向けになって飽きずに神秘的な満天の星空を眺めていました。



  早速、東京に帰ってからネットで調べると牡牛座に属する散開星団M45といい1.4等星の星の集まりで「すばる」は日本語で束ねるの意味の「統べる(すべる)」という言葉が訛って「すばる」なったとか「昴」という漢字は中国では「昴」(こう)と読み、日本に入って「すばる」と読むとか。 西洋では「プレアデス星団」、日本では昔「六連星(むつらぼし)」などとも言われ清少納言のいた平安時代から有名な星のであることなどがわかりました。

 星については学校の授業や中学生のころ家の庭先で母親に北極星の見方を教わった時のことを思い出します。 そのころは東京で冬の北の夜空には北斗七星や北極星が輝いていました。 それ以来夜空をしみじみ眺めることはまったくと言って良いほど有りませんでした。私の人生の中からすっぽりと抜け落ちてしまっていたのです。
今では北の空は明るすぎ北極星は見ることが出来ないのは残念です。

 5〜6年前から健康のため家から2.5Kmほどの所にある葛西臨海公園を夜散歩することにしています。 ここは東京湾が一望でき、左にはディズニーランドとホテル群の灯り、右には若洲臨海公園やゴルフ場、遠くに羽田に着陸体制に入った大型旅客機が並んで光の列を作っています。散歩するにはとてもよい環境ですが夜の海岸も結構明るく星を見るにはあまり適しているとはいえません。 見えるのは天頂から東と南方面の東京湾に面した方向だけで都心方面の西側や北は明るすぎて見えません。
  ネットで「昴」の位置を調べると比較的素人でも分かりやすいオリオン座の直列に並んだ三ツ星を探し上の左側にあるベラトリックスを見つけさらに上を見てひときわ明るい星一等星のアルデバランのさらに延長線上とのことで、よく空を見上げました。 晴れた日でも星は10個見えれば良いほうで「昴」は見えませんでしたのでしばらく探索はあきらめていました。


星座のリンク   http://star.gs/index.htm


  秋になって空がいくらか澄んでくると20個くらい見えるようになってきました。
ある月が出ない日いつもより星の数が多いかなと思っていると「昴」がある筈の位置にもやっとしたものが確認されました。 外灯のある明るい場所を避け林の中の光が届かない場所を探して目を凝らしてしばらく見ていると次第に焦点が合い六連星が浮かび上がり一つひとつが交代でダイヤモンドのように瞬きました。 「すばるだあ・・・」といって息を飲みました。 やっと見つかった東京でも見えると思うと、ただただ感激でした。

 一般的に人生で中年を過ぎると物事に対して驚いたり、感激することが少なくなるといいます。私もその一人で最近は何事にも感動するということがあまりありませんでした。
八丈島の満天の空にある異常なほどの星の多さに驚き、東京で「昴」を見つけて喜び、今まで「すばる」について散在していた記憶が一つに結びついたことに最近になく感動を覚えました。 今まで数十年の人生に無かった星を見るような小さなことで大きな喜びを味わえたことは自分の心の空白部分をすばらしい感動で満たすことが出来たような気がします。
  また、満天の星空を見て感動を味わいに行きたいと思う今日この頃です。   
                                                 


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