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コラム 1999.7.23
フライトシュミレータ体験操縦記
リバーサイドエアロクラブ 機体整備・記録担当 河原千春
みなさんこんにちは!
リバーサイドエアロクラブのクラブ員の河原と申します。
今回は、私が体験したB747−400のシュミレータ搭乗のお話をしたいと思います。
日本航空では、JALマイレージバンクの会員向けに、実物のフライトシュミレータを使用した体験操縦を行っています。
これは、半年毎に応募を行い、毎月2回4名ずつの計48名の抽選を行い、当選者は20000マイルと引き換えに、実物のシュミレータを体験操縦できるというものです。
600人という10倍以上の応募者から当選し、7月10日、羽田乗員訓練所にてフライトシュミレータに搭乗してきました。
使用したシュミレータはB747−400のシュミレータ2号機(SIM−2)で、4名が交代で約2時間にわたり体験操縦を行いました。
13:30 羽田乗員訓練所の受付にて集合、女性のアシスタントの方が研修ルームまで案内してくれます。
「今日は関東近郊の方ばかりです。」「北海道から来られる方もいらっしゃいます。」との事で、交通費は自費なので遠い人は大変だなあと思いました。
30分ほど研修ルームでシュミレータについての説明があり、実機のジャンボは200億円で、シュミレータは1/10の20億円という事、現在のNightのLanding等、規定で決められているフライトは、ほとんどこのシュミレータで可能となっている事などが分かりました。
また、このシュミレータで使用している計器は、ほとんどが実物で、フライトログブックにも時間が記載できる認可を取っているとの事でした。
14:00 いよいよシュミレータに搭乗です。
シュミレータルームは格納庫のような大きな部屋になっており、1部屋に1台ないし2台のシュミレータが設置されています。
実際のシュミレータはコンピュータ制御されているため、部屋の中自体は少し肌寒い位です。
最初の部屋には固定された(動かない)シュミレータがあり、これは手順を覚える為に使用するとの事で、2億円位ということです。
その奥にはB747とB767の2台が設置されており、更に奥に本日搭乗するB747−400のSIM−2(シュミレータ2号機)があります。
手前の部屋のB747シュミレータと形が違うのは、作られた年代等で外見はまるっきり違うとの話です。
いよいよタラップを昇り、シュミレータに搭乗です。
シュミレータには我々4人と教官である機長、設定等をアシストしてくれる日本航空の2名(年配の男性と若い女性の方)の計7名が乗り込みます。
後部のドアから入るとそこはB747のコクピットそのもので、キャプテンとコパイシートの後ろには2つのジャンプシートが並んでいます。
操縦は15分ごとに交代でキャプテンシートに座り、教官がコパイ席にて教えてくれ、2名がジャンプシート、最後の順番の1人と2名の日航職員は後ろに立って搭乗です。
最初の15分ずつは、羽田のR/W34RからのTake offとLandingです。
まず、座席を電動のスイッチで合わせ、シュミレータの画面をR/W34Rの手前にセッテイングし、いよいよTake offです。
スロットルのパワーを少し入れ、7ノット位でタキシングし、R/Wの中心に来るように左手のステアリングレバーを回しながら、左のラダーペダルを踏みます。
一人目のAさんはターンするのが遅くて滑走路内で回りきれません。
教官が「これではやりなおしだね」と言ってブレーキで止まったので、戻るのが大変だなあと思っていたら、画面が最初と同じR/W34Rの手前に切り替わりました。
そうそうこれはシュミレータだったと思い出すほど、画面はリアルです。
ちなみに、映像は左右180度以上のスクリーンに映し出され、上下も覗き込める大きさです。
今度は問題なくTaxi into Positionし、いよいよTake offです。
一旦、スロットルを少し入れ、Powerが上がってきた所でスロットルの元に付いているスイッチを押すと自動的にフルパワーまでスロットルがスムーズに上がり、後はラダーペダルで滑走路の中心から外れないようにコントロールし、操縦桿を引いてTake offするだけです。
教官がスピードをチェックしコールしてくれます。
「V1...ローテーション」操縦桿をぐっと引きます。機体がフワッと浮いた感じがして上昇しはじめます。
上昇角を17度位にとり、3000フィートまで上昇、教官の「3000フィートでレベルオフしましょう」という言葉に操縦桿を戻しますが、あっという間に3500まで上がってしまいます。
レベルオフ後、右ターンに入ります。
ちなみに、操縦は操縦桿のみで行い、上昇しようと操縦桿を引くと、自動的にスロットルが前方へ動き、降下しようと操縦桿を押すと、自動的にスロットルが絞られます。
今度はLandingです。
5マイルFinalに設定し、フライト ディレクター(FD)をONにします。
FDとは、姿勢指示器上に表示されるポイントで、このポイントを姿勢指示器の中心に持ってくるようにコントロールすると、経路にそって飛行できます。
ILSとは別のもので、Take off後からランディングまで、表示する事が可能です。
このFD通りに飛行するように自動操縦を設定することも可能です。
他の3人は飛行機の操縦経験がなく、オーバーランする人、着陸できず、ゴーアラウンドする人、着陸はできても、滑走路からはみだしてしまう人等様々です。
私の番ですが、教官から「河原さんは、ライセンス保持者なので、期待できますね!」と言われ、意地でも失敗する訳にはいきません。
FDの指示にぴったりと合うようにコントロールします。
コンピータの合成音が高度を知らせてくれます。
「ハンドレット...フィフティ」
いつも乗っているチェロキーのつもりでフレアーをかけます。
するとどうでしょう...どんどん上昇してしまうではないですか!
教官いわく、ジャンボは小型機のようなフレアーはいらず、ほとんどノンフレアでも降りられる機体だそうです。
気を取りなおして再度チャレンジ。
今度はフレアーをかけ過ぎないように降ります。
キュキュッとメインギアが接地し、トンッという軽い衝撃とともに前輪が接地します。
すかさずスロットルをリバースに入れ、ブレーキも踏みすぎないようにかけます。
「最後に止まる時もブレーキを強くかけるとお客様がとんでしまいますよ!」という教官の言葉に、止まる瞬間にブレーキの力を抜きます。
今度はうまくいきました。
やっとライセンサーの面目が立ちました。
2順目はそれぞれ好きな空港にランディングしましょうという事で、一人ずつ、ホノルル・大阪(伊丹)・成田・沖縄を選択します。
1人目のホノルルではTake off後、ホノルルのビル街に向かってみましょうと言う教官の言葉で航路から外れ、市街地へと向かいます。
ビル街が見えた所で、教官の「操縦を替わって観光フライトをしましょう」という言葉とともに、機種をぐいっとビルの間に向けて急降下します。
「シンクレイト!シンクレイト!...プルアップ!プルアップ!」
コンピュータの合成音による警報が鳴り響きます。
シュミレータでなければ味わえないフライトです。
2人目は大阪(伊丹)です。
私は仕事で月に4回位は大阪に行くため、伊丹の回りの景色は見なれているのですが、Take off後騒音問題で、左に見える池と河の間で旋回しないといけない等教えてもらいました。
3人目は成田ですが、周りには何もなく、教官の「成田は何もないので、つまらないですよ!」の一言で終わってしまいました。
4人目は私で、沖縄のTake offとRandingです。
Take off後、米軍の基地の関係で高度を取れない事等を教えてもらい、左に海を見てのLandingでは、山の関係でILSが少しずれている事なども分かりました。
最後に時間をオーバーしているにもかかわらず、教官の60度バンクの急降下からの立てなおしやエーカースによる航路上に他の航空機がいた場合のシュミレーション、自動操縦での横風での強風時の着陸等を体験させてもらい、大変楽しい2時間(実際は2時間半位)でした。
終了後、研修ルームに戻り、名誉機長認定証を頂き、持っていったフライトログブックにもサインを頂きました。
小型の飛行機を操縦する人はたくさんいますが、一般人でフラトログにB747−400の記載がある人はそういないでしょう。
短い時間でしたが、ジャンボジェットのキャプテン気分を満喫できました。
みなさんもJMBのマイレージをためて、一度ジャンボのキャプテンになってみませんか?
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