コラム

双発訓練 IN オーストラリア
 
1999.9.25  リバーサイドエアロクラブ会長 広田 正純

 中年よ大志を抱け!  なんて気負いをもって始めた飛行機も次にはアクロバット、計器、マルチと夢はふくらむばかり。 自分の人生訓には「人がやれる事は自分にも出来る、常に少し上を目指しチャレンジしてその繰り返しで最後までいくことが出来る」があり、人生は一回きり、絶対悔いのない人生を送ろう。
 そんな私にも上を目指していくのに一つの大きな障害がありました。頭に勉強したことが全然入らなくなっていったのです。しかし夢もあきらめられず一発奮起、衰えた左脳から全然使っていない右脳を使えば何とかなるなんてシロウトの浅い考えで始めた左手を使う訓練も約一年たちそれではとこの9月にオーストラリアにマルチの訓練に行きました。

 ブリスベーン、オーストラリアの東海岸のまん中あたりに位置する都市には約10年前子供と2人でハレー彗星を追いかけて以来2回目。しかしオーストラリアの印象はあまりなく、またマルチの訓練ということで少しは緊張して朝7時ブリスベーンにつきました。
 訓練する飛行場は北へ100Kmほどのカランドラという所で、オーストラリアらしく回りの森にはカンガルーやワラビがたくさんいて昨日ここの訓練生がテイクオフの時ノーズギヤーに飛び出したカンガルーを引っ掛け危うく大惨事になる所だったらしい。 着いて4時間ほどグランドレッスンをしてすぐ訓練、機体はPA-30ツインコマンチ、マルチでは一番難しいといわれるものです。 テイクオフして10分ほどしてすぐシングルエンジンでのフライト、プロペラが完全に止まりフェザーの状態を初めて見てすごく緊張し、ラダーをふむ足がパンパンに張り、これからの訓練が簡単でないことが始めてわかりました。 まずエンジンをかけるプロシジャーも今までの単発とエンジンと違い又計器のチェックやシングルエンジン飛行におけるチェックなどJEPPESENの本を3回ほど読んで自信まんまんの私にはちょっとショックでした。 しかし飛行場には日本やオーストラリアをはじめマレイシア、パプアニューギニアなどと多彩な顔ぶれの仲間がいて、特にパプアニューギニアのF氏とは歳も42歳と他の訓練生に比べ近いので仲良くなりました。 私がなかなか覚えられないというとグチをこぼしたら彼も右から左へすぐ忘れてしまうと言い、同類相憐れむで意気投合し毎日が楽しく過ごせました。 彼の話は面白くニューギニアでは850の言語があり、隣の村とは言葉や踊り、化粧などまったく違い別の国のようだという事を知ってびっくり。 自分の妻も隣の村(20Kmくらい離れている)からもらったが、初めの1〜2年お互い言葉が通じなくてこまったといっていました。
  
  次の日はエンジン始動からタッチアンドゴーそしてシングルエンジンオペレートと一連の訓練、特にVMCにおける訓練は事故がすごく多いという事前の情報で一番緊張しました。 毎日、毎日シングルエンジンオペレートとVMCそしてシングルエンジンでのランディングを4回ほどクリアーし5日目、本日はテイクオフの時のシングルエンジンオペレートの訓練という時突然のパンク、飛行機のパンクは初めてでしたが意外と冷静にしていられたことに自分ながらびっくり、4日間もきつい訓練をしていると少しは自信もついてきたのかな。 しかし飛行機というものはプロシジャーを覚えるのは私たち中年にとっては大変だけれど一度覚えその通り操縦すると本当に教科書通り動く乗り物である。 シングルでのオペレートでラダーだけを使っていると毎分200フィートしか上昇しないのにエルロンを3〜5度傾けると600フィートで上昇したり、ギャーを引っ込めるとトリムが大幅に変わりこれほど違うのかとびっくり。 10時間ほど乗ってチェックアウト。
  その後パイパーターボアローを借りたの訓練生とオーストラリアの空を楽しみました。 最後にインストラクター付きではあるがゴールドコースト(200Km)への1時間のフライトを楽しんできました。 さあ次はジェット機か潜水艦だぞ!


PS.  訓練も終わり明日出発と言う前の日ヘリコプターにチャレンジ(R22)高さ1〜2mくらいの所をゆっくりと飛ぶ気持ちは飛行機とは一味違った興奮を私に与えてくれました。 又、森の上をぎりぎりの高度で高速度で飛んでいるとまるで映画の世界にいるようでした。 空とか海の中とか普段の生活の場と違う環境は麻薬のように人を引きつけるものです。

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